主催する賞で他社の本が1位になる意味とは?
新書大賞を受賞して「最高の一冊」になるということ
新書大賞が発表されると売り場が盛り上がる、という話は初めにした通りで、弱冠16歳の賞であっても定評をいただいています。これは自社レーベルの新書があるにもかかわらず他社の新書もノミネートさせ、逆に自社の新書を対象から外すということもしない、真の意味で分け隔てのない姿勢が、書店や読者にも伝わっているからだと考えられます。
「話題性も面白さも学術書としての評価も、全部揃っているのが受賞したら美しいよね」
――賞の創設当事者がこう言うように、誰がどう見てもこの年いちばんの新書はこれであるという妥当さ、そして納得感があってこその"新書大賞"なのだとわかりました。
過去のどの受賞作であっても、話題性、売れ行き、内容の充実さと評価の高さ、どれを取っても優れているものだといえます。それが読む本に迷った読者への道標に、または読者が書店に足を運ぶ理由になるならば、新書大賞にとってこんなに嬉しいことはありません。「最高の一冊」になるということは、まだ見ぬ読者に手に取られる未来が大きく拓かれるということでもあります。
だからこそ、たとえ競合企業である他出版社の新書が受賞したとしても、否、どの出版社の新書が受賞したとしても、「新書大賞を受賞する」ということそのものが、新書界、ひいては書店や出版界の中でもひときわ話題を呼び、人を呼び、「新書」というフィールドを大いに盛り上げているのです。
次回は3月31日配信予定です。
お楽しみに!!
中央公論編集部
== 特集 ==
独裁が崩れるとき
◆〔対談〕二つの権威主義体制を徹底解剖
プーチンと習近平の急所はどこにあるのか?▼小泉 悠×熊倉 潤
◆歴史は再び自由民主主義へと弧を描く▼筒井清輝
◆「アラブの春」の挫折と教訓▼酒井啓子
◆白紙革命は習一強崩壊の号砲か?
Z世代が揺さぶる中国のこれから▼安田峰俊
◆「分断国家」東ドイツ 社会主義体制の崩壊▼河合信晴
◆インターネットは再び民主化の武器になるのか?
変貌する監視体制と市民意識▼山本達也
◆〔対談〕歴史に見る独裁と統治のリアル▼君塚直隆×池田嘉郎
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【時評2023】
●改革と革命とPTA▼岩間陽子
●柄谷行人の思想と日本経済の衰退▼井上智洋
●福沢諭吉と「二月の勝者」▼河野有理
◆国家転覆計画の背景を読む
「帝国市民運動」及び「最後の世代」から見るドイツの思想的分断▼今野 元
●学問と政治~新しい開国進取 安全保障編【第4回】
憲法改正の方向と安保を論じる▼北岡伸一
◆〔鼎談〕憲政史上最長政権の軌跡
回顧録が明かす安倍政治の戦略と人事▼菅 義偉×北村 滋×橋本五郎
== 新書大賞2023 ==
●新書通106人が厳選した
年間ベスト20
●大賞受賞者に聞く
『現代思想入門』学術を身体的に咀嚼し、社会と繫ぐ▼千葉雅也
●2位『映画を早送りで観る人たち』稲田豊史、 ●同『人類の起源』篠田謙一ほかベスト20レビュー
●〔編集者鼎談〕潜在需要を掘り起こす腕利きの3人
ヒット作のつくり方▼栗原一樹×田頭 晃×多根由希絵
●インタビュー
▼詩の世界でも問われ始めた古くて新しいジェンダー[文月悠光]
▼歴史と現代は地続き 時事の見取り図を手にするために[山崎怜奈]
●小川さやか、斎藤幸平、鈴木涼美、原 武史……
目利き48人が選ぶ2022年私のオススメ新書
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◆知識人と政治の有益な緊張関係のために
政治学者・矢部貞治の軌跡から何を学ぶか▼井上寿一
◆〔対談〕没後1年を機に捉え直す
作家としての石原、現象としての慎太郎▼猪瀬直樹×鹿島 茂
《好評連載》
●冒険の断章【第38回】〈実在の精髄〉とは何か▼角幡唯介
●炎上するまくら【第75回】扇子と手ぬぐい▼立川吉笑
《連載小説》
●ジウX【第8回】▼誉田哲也