AIグラビアアイドルの何が問題だったのか?「顔だけ」「演技だけ」「声だけ」俳優が誕生する日は近い
人工知能はウソをつく【第2回】
清水亮
急速に進化を続ける人工知能。日本政府も戦略会議を立ち上げ、その活用や対策について議論を始めた。一方、プログラマーで起業家、そして人工知能の開発を専門とする清水亮氏は「信頼に値するAIを生み出せるかどうかで私たちの未来は変わる」と喝破する。その清水さんによる人工知能についての連載、第二回のテーマは「AIグラビアアイドルの先に」です。
ある種の挑発
梅雨入りの少し前、浅草橋の駅前にあるコワーキングスペースに、ちょっと太った男が入ってきた。男は興奮気味に、手に持った一冊の雑誌(そう、紙の雑誌だ)を私に見せた。
「読みました? 今週の『週刊プレイボーイ』」
聞けば『週刊プレイボーイ』を刊行する集英社が、生成AIで作ったグラビアアイドルの写真集を発売するという。
発売すること自体は耳にしていたが、生成されたAIグラビアなるものは実際には見ていなかった。
そこで、写真集となる予定のグラビアが掲載された雑誌をパラパラと見てみると、すぐに「これはまずい」と感じた。
「実在の人物との関係」「画像の著作権」など、考え始めれば気になる点はいくつかある。しかしそれ以上に、著者が何を「まずい」と感じたかと言えば、AIグラビアが、人間の女性が連続して何人か掲載されているコーナーに一緒に並んでいた、ということである。
編集部としては、ちょっとした遊び心だったに違いない。しかしこれは、ある種の業界の人々に危機感を抱かせるのに十分な挑発に見えた。