AIグラビアアイドルの何が問題だったのか?「顔だけ」「演技だけ」「声だけ」俳優が誕生する日は近い
人工知能はウソをつく【第2回】
清水亮
含まれていたメッセージ
まず、誰がどう見ても、「人間のグラビアアイドルのポジションを、この先、AIグラビアが取って代わるかもしれない」というメッセージを含んでいることが容易に想像できる。
特にそれを生業としている人や、そうしたグラビアアイドルの支持者からすれば、それは自分たちにとって「終わりの始まり」に見えてしまうかもしれない。
グラビアページは、業界関係者が自分の会社やライバル会社のタレントをチェックする、もしくは自分の仕事にかかわってもらうキャストを選ぶために眼を通すような、いわば「戦場」だ。ここから知名度を得て、テレビやイベントへ羽ばたいていくアイドルも多い。
そのグラビアアイドルたちの貴重なステージを、生成AIが奪う。そんな構図が透けて見えた。
生成AIによるグラビア写真集だけをしれっと発売していたのなら、騒ぎはここまで大きくならなかったかもしれない。
しかし、本来人間があるべき、人間が大切にしてきたページをAIに「奪われた」と受け取った関係者が心穏やかでいられるはずがない。
実はAI...というか、CGでグラビアが作られたのはこれが初めてではない。
ホリプロは、1996年に伊達杏子というバーチャルアイドルをデビューさせている。伊達杏子は2007年までに3代にわたってバージョンアップを重ねた。2018年には「伊達杏子の娘」という設定の「伊達あやの」まで登場している。
しかし、伊達杏子の存在を問題視した人は、これまでいないのではないだろうか? 今や、VTuberが普通に存在する時代でもある。
結局、数日で写真集の発売は取り下げられた。主に「生成AIをとりまく様々な論点・問題点についての検討が十分ではなかった」というのが、版元が発表した取り下げの理由だった。