AIグラビアアイドルの何が問題だったのか?「顔だけ」「演技だけ」「声だけ」俳優が誕生する日は近い
人工知能はウソをつく【第2回】
清水亮
歓迎されるAIグラビアアイドルとは
なお、現在の生成AI分野では「自家醸造」が盛んに行われている。
ざっくりと言えば、何らかの情報を事前に用意し、自らの目的に向けてそこに大量の情報を追加学習しながら、新しいものを作り出すということだ。
こうした過程を「ファインチューニング」と呼ぶ。
たとえば特定の人物の写真を元にファインチューニングすると、AIはその人物の様々な表情やポーズ、服装の画像を生成できるようになる。
つまり、タレント事務所が、事前にタレントの許可を得て、正式な契約を結んだ上で、その人物をもとにファインチューニングした生成AIグラビアを作れば、問題なく写真集を発売し続けられることになる。
それにより、海外ロケや過酷な撮影に挑むことなく、写真集を発売できるのかもしれない。あるいは年配のタレントでも、若い頃の写真を使ってファインチューニングすることで、若い姿で新しい写真集を出すことができるだろう。さらには病気や怪我で本人が動けない状況にあっても、生成AIを介すことで、新しい仕事ができるようになるかもしれない。
もちろん、いずれも生み出されたものは「公式」だ。
こういった形でAIグラビアアイドルを活用したのなら、ファンにとって歓迎される可能性は高いのではなかろうか。
やや話がそれるが、今年三月に、第一回となるAIアートグランプリが開催された。多くの応募作品の中で優勝したのは、男性が、亡き奥方の遺影を元に自家醸造した生成AIを用いたミュージックビデオだった。
こうしたビデオは、今や各家庭にあるような普通のスペックのパソコンで実現できるし、そのためのWebサービスも既に存在する。今後、愛する人を失った時などに、同様のことを考える人は増えるかもしれない。