今夏の「はだしのゲン現象」を夏の終わりに振り返る

若手社員の いま気になるあの本

なぜ今年に売れたのか?

僕が営業で書店訪問した際の、書店員さんとの会話を振り返ってみても、『はだしのゲン』の話題が肌感覚として多かった。なぜ、例年にない売れ行きは今年でなくてはならなかったのだろう。書店員さんは、G7サミットの広島開催で「ヒロシマ」に大きな注目が集まったことをその理由として挙げていた。

今年5月末のサミットを思い返せば、岸田首相が被爆国日本の総理大臣として、彼の地元に招待したいという意向もあり、いわば戦勝国の首脳陣を「ヒロシマ」に招待したことでサミットの注目度は高まった。広島サミットを前にして、「果たして私たちは「ヒロシマ」のことをどこまで知っているのか」という思いを持った人も多かっただろう。

しかし、これだけなら『はだしのゲン』が書店で「売れた」理由にはならないように思う。「ヒロシマ」に関連する書籍が無数にある中で、どうして当コミックが手にとってもらえたのか。全7巻で読むだけでもそれなりの時間がかかり、合計5000円を超える財布に優しいシリーズとはいえないにもかかわらず、どうして図書館などではなく書店で手にとってもらえたのか。

 

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