清水亮「AIの世界で日本は戦えていますか?」と問われて。最大のチャンスを逸した我々は「竹槍で世界に挑んだ」歴史を笑うことなどできるだろうか

人工知能はウソをつく【第9回】
清水亮

オープンソース陣営とクローズドソース陣営

いま、世界のAIをリードしているのは中国だ。この10年くらいは中国政府がAI研究者の育成に力を入れていて、世界中の学会を席巻している。

国際学会でも、ネットでも、目立つ論文はたいがい中国人が書いている。Microsoftの名前で出ていようとGoogleの名前で出ていようと、必ず中国人の名前が入っている。それくらい中国はAIの世界でリードしている。

特にここ二ヶ月くらいはテンセントとアリババとバイトダンス(TikTok)がつるべうちのごとく、毎日のようにとんでもないブレークスルー論文を発表している。しかもオープンソースで。

AIの世界は大きく分けてオープンソース陣営と、クローズドソース陣営に分かれている。

オープンソースの雄は中国で、ついでヨーロッパにはStableDiffusionを産んだ大英帝国と、ChatGPTに対抗しうるオープンソースとして開発されたMistralを擁するフランスがある。

クローズドソース陣営の雄は、当然ながらアメリカ合衆国だ。ChatGPTを世に出した「OpenAI(オープンエーアイ)」もその中に存在する。

しかしその会社名に反して、彼らはここのところ一切のオープンソースをやめてしまい、クラウドで利用料を取ることにご執心だ。もちろんOpenAIの後ろ盾・・・というよりももはや実質的支配者はMicrosoftだ。これとほぼ全く同じ方針をとるのがGoogleである。

Adobeも、新技術を次々と発明。論文発表もしているがソースは一切出さない。AI用半導体の世界的指導者たるNVIDIAも、ソースは公開するが商用利用不可、という不可解な制限をつけている。

その中間にあるのがFacebookあらためMeta社。ここはソースコードを公開し、商用利用可能としているものの、「Facebookの脅威になるような目的には使ってはいけない」という制限を設けていたりする。

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