清水亮「AIの世界で日本は戦えていますか?」と問われて。最大のチャンスを逸した我々は「竹槍で世界に挑んだ」歴史を笑うことなどできるだろうか

人工知能はウソをつく【第9回】
清水亮

どのようにして世界と渡り合っていくべきか

今も昔も日本人は"物量"に対する感覚が根本的に鈍い。「飛来する戦略爆撃機B-29に、日本人は竹槍で対抗しようとしていた」という話を、21世紀の我々は、本当に笑うことができるだろうか?

もちろんMicrosoftのGPUは、高額なクラウド利用料金を払えば日本人も使うことができる。いや、正確には「できた」と言うべきだろうか。今、MicrosoftのGPUレンタルサービスですらも奪い合いになっている(なお、近年Microsoftはこのサービスの成長が顕著なことを背景に、増収増益を続けている)。

全く希望がないというわけではない。

さくらインターネットは日本政府の支援を受け、年内に2000基の最新世代GPUクラウドサービスを立ち上げる。しかもそれを海外クラウドの1/4程度の価格で提供するという。

単価で見ればABCIと同程度の価格設定。それでいて政府機関という都合上、毎年3月末にポイントが失効するようなABCIよりずっと使い勝手も良いはずだ。当初は月額と年契約ベースだが、今後は海外のクラウドのような時間単位の課金システムも構築していくという。

とは言え、この二年のビハインドを取り戻すのはそう簡単なことではない。

戦争で負けても、日本の先人たちはそのビハインドを経済で取り戻した。でもAIならびに、あらゆる面でのこれからの世界との戦いでは、その戦い方すら根本的に変えなければ、生き残りのシナリオを描くのは難しい。

かつて日本が太平洋戦争へと進んだ動機の一つは、石油資源への渇望だったとされる。日本における石油資源が非常に乏しいものだったからだ。

では21世紀の今、乏しい"計算資源"でどう世界と渡り合っていけばよいのか? 私達はかつてとよく似た局面に、再び立っている。

増補版 教養としてのプログラミング講座

清水亮

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清水亮
新潟県長岡市生まれ。1990年代よりプログラマーとしてゲーム業界、モバイル業界などで数社の立ち上げに関わる。現在も現役のプログラマーとして日夜AI開発に情熱を捧げている。『教養としてのプログラミング講座』(中央公論新社)など著書多数。
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