新史料で「日ソ戦争」を全解明 <新書大賞2025>2位『日ソ戦争』レビュー
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新史料で「日ソ戦争」を全解明
ここで言う「日ソ戦争」とは、1945年8月8日から9月上旬まで、満洲、朝鮮半島、南樺太、千鳥列島で行われた第2次世界大戦最後の全面戦争のこと。
▼日本では正式名称すらない「日ソ戦争」の戦闘の実態、終戦までの全貌を描く。「百科事典の一項目」をテーマとする中公新書が新たな一項目を作ったことにも敬意を抱きます(ちくま新書・柴山浩紀)
▼8月15日の「終戦」は終戦ではなかったのだと認識を新たにした(幻冬舎新書編集長・小木田順子)
新史料を用いて、短くも激しかった戦争を多角的に描き出した同書は第28回司馬遼太郎賞を受賞している。
▼日米戦争を軸とした〝南方主体〟の従来の戦争像のアップデートを促す力作。終戦以降の北方の空白地帯にピースを見事にはめ込んだ著者の〝北方主体〟の戦争像は、日本中枢に芽生えたソ連への希望的観測と、それに伴う防衛体制の弛緩・情報評価の歪みを照らし出す(産経新聞出版企画部長・花房壮)
▼どさくさに紛れて対日戦争に参戦したかのようなソ連であるが、実際はそうではなく、以前から米大統領の強い要請があったという。米ソでの約束が現在の北方領土問題につながっていること、シベリア抑留などの悲劇がなぜ起きたかなど、目を伏せたくなるような史実が明らかになる(有隣堂商品企画部部長・芝健太郎)
▼戦争の記憶を風化させないためにも、これだけの内容を新書で読めることに大きな意味を感じた(ジュンク堂書店大阪本店・殿塚弘基)
〔『中央公論』2025年3月号より〕
「新書大賞2025」上位20冊までのランキングと、有識者45名の講評など詳細は、2025年2月10日発売の『中央公論』3月号に掲載されています。
特設ページでも上位20位までのランキングを掲載しています。
「新書大賞」特設ページ https://chuokoron.jp/shinsho_award/