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小島慶子✕林 香里 人気広がるフェミニズム、変われないジャーナリズム

小島慶子(エッセイスト)×林 香里(東京大学大学院教授)

会員制フェミニズムにさようなら

─お二人は二〇一七年、「MeDi(メディア表現とダイバーシティを抜本的に検討する会)」というグループを結成し、シンポジウム開催や出版など幅広く活動していますね。

小島 これまで、街場のメディア論的なものは軽視されがちでした。女性の声に注目が集まることも少ない。メディアのあり方を論じる上では、学術的な観点と、メディアの現場にいる人たちの実感との両方が大事なのですが、接点は案外少ないのです。
 そこでMeDiで議論の場を作ったところ、メディアの問題に関心を持つ層が厚くなったと感じています。

 私は研究者として、ジャーナリズムやメディアと女性について考え、調査や議論をしてきましたが、閉じられた研究者集団の中の、さらにマイナーと見られてきた女性研究者の中でしか共有されず、外部に発信してもほとんど受け止められないという悩みを抱えてきました。
 ところが、MeDiでは慶子さんをはじめメディアの現場にいる方々が中心になり、SNSなどで発信してくれたことで、シンポジウムには若い女性だけでなく、男子学生も来てくれるようになりました。以前は私のような白髪交じりの女性だけという感じでしたので、世代が変わったなと感じています。
 ネットメディアの取材がとても多く、シンポジウムの翌々日くらいには写真入りでネットに情報が上がっているのも嬉しい。

小島 LGBTQなど性的マイノリティの当事者の方々や、メディア関係者も集まってくれましたね。
 フェミニズムについて言えば、ネット上などで議論が盛り上がるにつれて、自分たちが認めた人しかフェミニズムを語ってはいけないとか、男性優位的な組織に適応してきた人にはフェミニズムを語る資格がない、と断じる動きも出てきています。誰かが承認してくれないとフェミニストと名乗れない、「会員制」のような状況が生まれやすいのです。
 でも、それでは誰の得にもなりません。たとえ初歩的な知識しかない人であっても、これはおかしい、と既存の仕組みに違和感を覚え、ジェンダー平等を実現したいと思った時には、自分の中に小さなフェミニストが生まれています。フェミニズムを一人称で語ることは誰にでもできます。
 間口を広げていかないと、男性も含めて社会のいろいろな場所にいるさまざまな人たちにとってのジェンダー平等は実現できません。

 私のような女性の大学教員は、男性たちにとって「叱られる」というイメージがあるらしく、「私、被告席に座ります」という人が少なくありません(笑)。そう言われるたびに、私は傷ついています。
 フェミニズムが女性の権利の主張を中心にしていた時代もありましたが、本来の目標はいろいろな性やエスニシティに社会を開いていこうという思想だったはずです。

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