鈴木洋仁 日本人が「世襲」を好む、意外な理由

鈴木洋仁(東洋大学グローバル・イノベーション学研究センター研究助手)


「わからない」

 いまの日本には、格差社会を嫌いつつも、同時に「世襲」を信じているからである。

 日本財団の「18歳意識調査」をみよう。

 全国の17〜19歳の男女を対象に行ったインターネット調査(2019年)では、「国会議員の世襲についてどのように思いますか」との設問に対して、1000の回答数のうち、約半数(50・8%)が「わからない」と答えている。「問題だ」(33・1%)、「問題ではない」(16・1%)を大きく上回っている。

 日本財団のウェブサイトで公開されている自由回答が興味ぶかい。

「問題だ」とする331の回答の多くが「本人の実力ではない」「政治家になる人が限られてきてしまうような気がする」といったように、明確な理由を書いている。

「問題ではない」とした161の回答もまた、「世襲自体は悪くないと思うから」「世襲とはいえ、結局は議員になるのなら選挙を通じて選ばれるから」などと、はっきりとした根拠を示している。

 これにたいして「わからない」とした508の回答のうち、じつに90%ほどが「わからない」「興味がない」さらには「何を言っているのか分からない」と、みずからの考えについて理由を明らかにできていない。

「世襲」「格差」へのメディアによる批判にもかかわらず、なぜ、「わからない」とする回答が多くを占め、そして、その理由について明らかにできないのだろうか?

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