鈴木洋仁 日本人が「世襲」を好む、意外な理由
鈴木洋仁(東洋大学グローバル・イノベーション学研究センター研究助手)
あなたは皇室に入りたいか?
皇族は「世襲」を義務づけられているのに、「格差」の象徴だとはみられない。
「皇族になりたい」「皇室に入りたい」との願いを持つ人が、いまの世の中にどれほどいるだろうか。
あなたは皇室に入りたいだろうか?
「世襲」に縛られるのは、皇族だけではなく、皇室に入る可能性があると報道された人たちにも及ぶ。
ジャーナリストの小田桐誠氏による『消えたお妃候補たちはいま』(ベスト新書)は、天皇陛下との結婚が報じられたり、噂されたりした女性70名の「その後」を追いかけている。
当時の報道事情や世論、さらには皇族と結婚することの意味を考える上で、貴重な著作である。
例えば、時計で知られるセイコーホールディングス創業家に連なる女性は、別の男性と結婚する予定が、式の2日前に急遽取りやめになったと、週刊誌に大きく報じられた。
個人情報を積極的に公開したいとか、世の中から注目を浴びたいと願っているなら話は別だが、結婚しなかった人たちですら、世間から好奇の目で見られる。「世襲」でもないのに「皇室に入ろう」と願う人は、どれだけいるのだろうか。
自由のない「世襲」を強いられる皇室を、これからの日本でもつづけていけるのか、心もとない。
にもかかわらず、日本人は、昨今の悠仁さまの進学先をめぐる報道にもみられるように、皇族が、皇族についてのニュースが好きである。
それは、安心できるからである。安心して、政治家や皇族という、一部の(特殊な)人たちに「世襲」を押し付けられるからである。
本誌(『中央公論』2022年3月号)、または、https://chuokoron.jp/chuokoron/digest/ では、そうした「世襲」の押し付けについて、より細かく論じている。
ぜひご覧いただきたい。
鈴木洋仁(東洋大学グローバル・イノベーション学研究センター研究助手)
〔すずきひろひと〕
1980年東京都生まれ。東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。博士(社会情報学)。専門は歴史社会学。京都大学卒業後、関西テレビ放送、ドワンゴ、国際交流基金勤務などを経て現職。著書に『「平成」論』『「元号」と戦後日本』『「ことば」の平成論』など。
1980年東京都生まれ。東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。博士(社会情報学)。専門は歴史社会学。京都大学卒業後、関西テレビ放送、ドワンゴ、国際交流基金勤務などを経て現職。著書に『「平成」論』『「元号」と戦後日本』『「ことば」の平成論』など。