谷口功一 夜のインフラ、ラウンジの現在

谷口功一(東京都立大学教授)

人びとに保護を与える「治者」

 現在、店には8名の女性スタッフがいて、これからさらに2名が入ってくるが、募集をかけたことはない。この人手不足のご時世、彼女の人徳によるところが大きいだろう。いろいろあったからこそ「お客さんが来てくれる有り難み、女の子が店に来て働いてくれる有り難みが身にしみる」と可奈さんは話すのだった。

 可奈さんの鯛焼き屋などでのバイトの話を聞き、私は最近読んだある本のことを思い出した。福田和也の『保守とは横丁の蕎麦屋を守ることである』(河出書房新社、2023年)である。

(続きは『中央公論』2023年8月号で)

中央公論 2023年8月号
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谷口功一(東京都立大学教授)
〔たにぐちこういち〕
1973年大分県生まれ。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程単位取得退学。専門は法哲学。著書に『ショッピングモールの法哲学──市場、共同体、そして徳』『日本の水商売──法哲学者、夜の街を歩く』、共編著に『日本の夜の公共圏──スナック研究序説』がある。
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