子どもの自殺対策には「ゲートキーパーの育成」を

- 10代の死因の1位は自殺
- 自殺の「原因」を知ることの難しさ
- 自殺対策で鍵となるのは事前予防
10代の死因の1位は自殺
日本では現在、年間2万人を超える人が自殺により命を落としている。自殺死亡率(人口10万人あたりの自殺者数)は、G7の中で最も高い。
さらに深刻なのが子どもの自殺者数の増加である。2025年3月には、24年における小中高生の自殺者数が過去最多の529名となったと厚生労働省と警察庁が発表した。年間で15名の小学生が命を落としており、中学生は163名、高校生は351名となっている。さらに、警察庁が取りまとめている調査では大学生も含まれるが、実は人数が一番多く、434名となっている。そのため大学生まで含めると、児童・生徒等の自殺者数はさらに多くなる。
10代の死因の1位が自殺である国はG7の中で日本のみであり、他国と比べても特異な状況である。これは他の死因で死亡する子どもの割合が少ないからではないかと言われることがあるが、自殺死亡率自体が他国に比べて高い状況にある。たとえば、20年時点のイギリスにおける10代の自殺死亡率2.6に対し、日本は7.0である。
政府は、このような状況に対し、対策に力を入れてきた。子どもの自殺対策は長らく文部科学省が中心となって担ってきたが、23年4月にこども家庭庁が設置されたことで、現在はこども家庭庁に自殺対策室が設置され、司令塔として対策に取り組んでいる。
また、同年6月2日には、こどもの自殺対策に関する関係省庁連絡会議が「こどもの自殺対策緊急強化プラン」を策定した。プランでは、自殺リスクの把握や適切な支援につなげるためのシステム、マニュアルの整備、多職種の専門家で構成される「若者の自殺危機対応チーム」の設置、調査研究の充実などが掲げられた。
しかし、日本全体の自殺者数はコロナ禍で一時増加した後、減少傾向にあるものの、残念ながら子どもの自殺者数は増加傾向にある。
なぜ子どもの自殺が増えているのか。どのような対策をとればよいのか。以下論じていこう。