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ザブングル・松尾の引退とM-1グランプリから見た芸人界の変化

西澤千央(フリーライター)

「壊す」のではなく「保つ」存在

 二〇二一年三月末からスタートしたTBSの朝の情報番組「ラヴィット!」はMCに漫才コンビ麒麟・川島明を抜擢した。さらに出演者にはずらりと吉本芸人が並び、キャッチコピーは「日本でいちばん明るい朝番組」。放送開始当初こそ「朝から芸人がうるさい」という元も子もない批判と低視聴率に悩んでいたが、視聴者の「コロナ関連のニュースに疲れた」という本音も後押ししてか徐々に支持層を広げている。

 川島は、相方の田村裕が出版した『ホームレス中学生』の大ヒットにより、長く「じゃない方芸人」の立ち位置に甘んじていた。しかし、そもそも初期のM─1グランプリ常連組だった麒麟のネタを作っていたのは川島であり、抜群の大喜利力とトークスキル、さらにはスタッフの意図を汲み取りどんな時でも番組を成立させるテレビ的上品さで、「じゃない方」のレッテルはいつの間にか田村へ......(現在田村は週"八"でバスケをしているという「バスケ大好き芸人」の地位を確立している)。

 そう、川島という、どちらかといえば地味な中堅の芸人が朝の情報番組を任される時代なのである。川島に、かつての芸人が負っていたような「放蕩」のイメージは皆無。どう転ぶかわからない深夜バラエティの企画に絶対的な安心感をもたらしてくれる稀有な存在ではあるが、テレビ的な派手さや華やかさはない。

 しかし彼の抜擢こそ、テレビにおける芸人という役割の、大きな変化を示していると私は感じる。いま、芸人はテレビを「壊す」人ではなく、テレビを「保つ」人なのである。

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