荒廃空き地の中に住宅が点在......昭和の負の遺産「限界ニュータウン」はなぜ生み出されたか

吉川祐介(文筆家)

バブルが「虫食い状」住宅地を生む

 誤解を恐れずに言えば、投機目的の分譲地がそのまま放置され、元の山林に還っていったというだけの話であれば、まだその後の問題は少なかったかもしれない。

 1980年代後半のバブル経済の到来によって都市部の地価が高騰すると、かつての投機型分譲地にもマイホームを求める者が続々と現れ始めた。購入者だけでなく建売住宅の販売業者も、好立地の宅地の確保が困難になるにつれ、建売用地をそうした投機型分譲地に求めるようになっていった。ほとんど空き地のまま放置されていた古い分譲地に、虫食い状に家屋が点在する「限界ニュータウン」の光景が出来上がったのは、このバブル期以降のことである。


(『中央公論』10月号ではこの後も、手放そうとしても買い手がつかない「限界分譲地」の現状や相続、実際に暮らしてみて直面する問題などについて論じている。)

中央公論 2025年10月号
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吉川祐介(文筆家)
〔よしかわゆうすけ〕
1981年静岡県生まれ。2017年にブログ「URBANSPRAWL限界ニュータウン探訪記」を開設し、現地取材に基づく記事を多数執筆して評判に。22年よりYouTubeチャンネルも開始。著書に『限界ニュータウン』『限界分譲地』『バブルリゾートの現在地』など。
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