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入山章栄 「受け身の発想」から新たな技術と価値の創出へ

入山章栄(早稲田大学教授)

移動時間の短縮は必要

─今後、移動時間の短縮は必要ですか。オンラインによる面談や会議の普及で出張頻度が減れば、移動にかかる時間は短くならなくても良いという人も多いのでは?

 そういう人もいるでしょうけど、もっと短縮してほしいという人もいます。例えば、東京から大阪まで新幹線で二時間半、名古屋まで一時間四〇分かかります。仮にリニア中央新幹線ができると、東京から名古屋まで四〇分。そうなると、革命的に違うことが起きる。杉並区にある私の家から東京駅までは約一時間かかります。東京駅から名古屋に行く方が早いという時代が来てしまう。すると、今までも軽井沢や鎌倉に住んで東京に通う人はいたけど、名古屋のベッドタウン、岐阜のような自然が豊かな場所に住んで東京に通うケースも出てくるでしょう。

─そうはいっても、リニア中央新幹線の需要は減るとみて、JR東海の採算を心配する人もいます。

 僕は基本、コロナで需要が減ることを心配する必要はないと思います。JR東海に課題があるのは、確かです。これまで東京と大阪、脳と心臓みたいな日本の二大都市をつないでいるだけで、殿様商売をしていた。これからは、乗る理由を作らなくてはならない。でもそれは、ほかの私鉄はずっとやってきたことです。東京・渋谷と横浜をつなぐ東急東横線は、横浜を開発して魅力的にしたり、渋谷で109、プラネタリウム、ヒカリエを作ったり。そうすると、皆渋谷に来たいから東急に乗る。需要が減る、増えるという受け身の発想ではなく、需要を作る、人を乗せる仕組みを作っていけば良いのです。

─リニア中央新幹線の開業により、東名阪のスーパー・メガリージョンが誕生し、日本の国際競争力が増すとの主張について、どうお考えですか。

 大阪、名古屋の視点からみると甘いと思います。最近、「拡張都市」という言い方があります。例えば東京、葉山、軽井沢は一つの都市とみる。人がいっぱいいてビルが乱立している東京から、週末には軽井沢で家族と知人に囲まれて過ごしたいと。複数拠点生活をしている人は、ギャップを求めているんです。ところが名古屋や大阪はミニ東京じゃないですか。似たような都市がつながると、ストロー現象が起きて、力の強い東京に吸い取られてしまう。名古屋は衰退する可能性すらある。だから、名古屋と周辺に別の価値を作っていく必要があるのです。

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