御厨貴×鈴木一人×松川るい 「想定外」ではすまされない! 戦争・疫病・自然災害 「危機対応」への喫緊の課題

御厨貴(東京大学先端科学技術研究センターフェロー)×鈴木一人(東京大学公共政策大学院教授)×松川るい(参議院議員)

ファクトをもとにした「乾いた議論」がしにくい国

松川 日本には、対策を考える時の悪弊があると思います。一つは目的が何なのかが明確でないままに進めてしまうこと。もう一つは、科学的知見やデータ、他国の先行事例や経験など、ファクトをもとにして「乾いた議論」をすることがあまり得意ではないことです。

 その理由の一つは、無謬性の神話に生きているからだと思います。

 リスクはどんなことにも必ず存在するのであって、ゼロリスクはありえません。能う限りの科学的データ、先行事例、統計などを使った上で、ベストである避難や防御の方法を想定しても、自然災害においては被害を受けるリスクもあるわけです。極端に言えば、この地域は捨てて逃げましょうということもありうるわけですが、日本ではそうしたドライな議論がしにくい。

構成:戸矢晃一

中央公論 2022年4月号
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御厨貴(東京大学先端科学技術研究センターフェロー)×鈴木一人(東京大学公共政策大学院教授)×松川るい(参議院議員)
◆御厨貴〔みくりやたかし〕
1951年東京都生まれ。東京大学法学部卒業。東京都立大学教授、政策研究大学院大学教授、東京大学先端科学技術研究センター教授などを歴任。「東日本大震災復興構想会議」議長代理などを務める。『政策の総合と権力』『馬場恒吾の面目』など著書多数。

◆鈴木一人〔すずきかずと〕
1970年長野県生まれ。立命館大学修士課程修了後、英サセックス大学大学院博士課程修了。北海道大学教授などを経て現職。APIで「福島原発事故10年検証委員会」の座長を務める。著書に『宇宙開発と国際政治』、共編著に『EUの規制力』など。

◆松川るい〔まつかわるい〕
1971年大分県生まれ。東京大学卒業後、外務省入省。米ジョージタウン大学修士課程修了。外務省ではASEAN協力や国際情勢分析に携わり、日中韓協力事務局次長、女性参画推進室初代室長などを務める。2016年に退官、自由民主党から参院選に出馬し、初当選。
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