昭和のインフレに消費者はどう向き合ったか

満薗 勇(北海道大学大学院准教授)

「かしこい消費者」という規範

 こうした明暗の入り交じる「消費革命」の時代にあって、消費者主権の理念が注目されるようになり、「消費者は王様である」という言葉が耳目を集めた。消費者は「裸の王様」になるな、王様にふさわしい「かしこい消費者」になれ、という呼びかけが盛んに行われた。「かしこい消費者」は買い物上手でなければならず、企業の広告やマーケティングに踊らされることなく、正しい商品知識を身につけて、よりよいお店と商品をきちんと選択できることが求められた。

 そのなかで、消費者のお店選びは、物価問題にも関わると強調された。


(『中央公論』9月号では、この後も家庭の内外で昭和のインフレと奮闘した消費者の歴史を描出している。)

満薗 勇(北海道大学大学院准教授)
〔みつぞのいさむ〕
1980年千葉県生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(文学)。日本学術振興会特別研究員などを経て現職。専門は日本近現代史。著書に『日本型大衆消費社会への胎動』『日本流通史』『消費者をケアする女性たち』『消費者と日本経済の歴史』など。
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