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渡辺佑基 鳥は飛びながら眠る――技術革新で明かされる動物の真の姿

渡辺佑基(国立極地研究所准教授)

ナマケモノはどのくらい眠るの?

 鳥の例をいくつか見てきたが、ここからは私たち人間により近い、哺乳類の例を見ていこう。

 哺乳類の中でとりわけよく眠るイメージがあるのはナマケモノだ。中南米の森林に暮らすこの動物は、1日のほとんどの時間を木の幹にしがみついたり、木の枝からぶら下がったりして過ごす。

 施設で飼育されているナマケモノの睡眠時間を計測した研究が40年ほど前に発表されている。それによると、ナマケモノは1日に16時間も眠るという。やはりこの動物は、語義通りの「怠け者」であるように思える。

 だが、ちょっと待って欲しい。飼育動物は食べ物を探す必要がなく、周囲を警戒する必要もないのだから、よく眠って当然ではないか。私だって、もしも上げ膳据え膳で仕事をする必要もなければ、1日の大半を寝て過ごす自信がある。

 同じように考えた研究者が、パナマの森林に生息する野生のナマケモノに機器を取り付け、脳波を計測する研究を行った。データが示した平均睡眠時間は9・5時間。飼育動物よりも6時間以上も短かった。ナマケモノはさほど「怠け者」ではなく、何十年もの間、汚名を着せられていたことになる。

 似た例は他にもある。哺乳類では一般に、体の大きな動物ほど睡眠時間が短い。ということは、陸上で最大の巨体を持つアフリカゾウは、極端に短い睡眠時間で日常を過ごしている可能性がある。

 しかし、動物園やサーカス団が飼育するゾウを調べた過去の研究によると、ゾウは1日に4~6時間ほど眠り、巨体の割に睡眠時間が長かった。

 最近、ボツワナの自然保護区にいる野生のアフリカゾウに機器を取り付け、睡眠時間を調べる研究が行われた。それによると、ゾウの1日の平均睡眠時間はわずか2時間。これまでに調べられたどんな哺乳類よりも短かった。丸2日間にわたって一睡もしなかったケースすらあった。動物園のゾウは横になって眠ることが多いが、野生のゾウは立ったまま眠り、3~4日に1度しか横にならなかった。

 ナマケモノでもゾウでも、厳しい自然の中で暮らす動物と飼育下でぬくぬくと暮らす動物とでは、睡眠のとり方が違う。それにもかかわらず、技術的な難しさのため、睡眠に関する過去の研究のほとんどは飼育動物を対象にしてきた。今後、脳波を計測する機器を使った野生動物の研究が増えるにつれ、動物の本来の姿がどんどん明らかになっていくだろう。

渡辺佑基(国立極地研究所准教授)
〔わたなべゆうき〕
1978年岐阜県生まれ。東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程修了。博士(農学)。海の動物の生態を、小型の記録計を取り付けるバイオロギングという手法で調べている。著書に『ペンギンが教えてくれた物理のはなし』(毎日出版文化賞)、『進化の法則は北極のサメが知っていた』など。

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