新装版という戦略  カバーを変えただけで購入につながるのか?

あの本が売れてるワケ 若手営業社員が探ってみた 連載第11回
中央公論新社の若手営業社員が自社のヒット本の売れてるワケを探りつつ、自社本を紹介していく本企画。第11回は、中公文庫『桃花源奇譚』を題材に、新装版の意義について考えてみました。

意外に少ない文庫書き下ろしと意外に多い切り替え本

文庫や新書には、書き下ろしと切り替え本があります。切り替え本とは自社や他社の刊行物に、変更を加えて出しなおした本のこと。じつは文庫の書き下ろしの作品はかなり限られていることはご存じでしょうか。

単行本の文庫化はもちろん、他社から出ていた本を自社から出しなおす、というケースも多くみられます。たまにタイトルの前や後ろに「新装版」や「改版」「増補版」などの文字があることがありますが、書き下ろしとは形態が違うこういった本たちも毎月のように出されています。「新装版」とは、内容はほとんどそのままにカバーをかえたもの。「改版」は内容に修正を加えたり、文字を組みなおしたりしていたものです。そして「増補版」は前の版の刊行後に分かった新事実など、内容を追加したもののことです。

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2022年8月に小社より刊行した文庫本で見てみると、『新装版 桃花源奇譚』の1・2巻、同じく『新装版 あなたの本』そして『台湾鉄路千公里 完全版』などがあります。『台湾鉄路千公里』は1980年に刊行されたものですが、その後増設された路線をカバーする文章を加えたり、紀行文を新たに追加したりしています。

また、12月新刊の中公新書『日本の歴史問題』は小社としてはおそらく、初の試みとなる「改題新版」として刊行します。もともと『国家と歴史』というタイトルで2011年に刊行した新書のタイトルを変え、さらに内容面でも最新の研究成果など大幅に追加し、さらに章を時代順に並び変え読みやすくするなどの改稿を施しています。

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