〈デトロイトでは197歳の老人まで投票〉米大統領選のデマを近畿地方の田舎町から流し続けたX氏の正体とは

情報パンデミック――あなたを惑わすものの正体
読売新聞大阪本社社会部

運営は広告収入目当て

「それはなぁ、やっている本人に聞かないとわからへん。まあ言えないけどな。フィリピンでやっているから」

――それは日本人なんですか。どういう関係の人なんでしょうか。

「もちろん日本人。昔の俺の仕事仲間やった人たちや」

――Xさんはどう関わっているのですか。

「こっちのサーバーとか事務所とかの管理、ドメインの取得とかは俺の名前でやっている。他にも色んな手続きをやった。でも今は全然関わってない」

――では記事を書いている人と連絡を取らせてもらえませんか。

「それはできひん、できひん。昔のやばい人間やから。フィリピン関連でやばい仕事の人間。その仲間や」

X氏はやや言葉を詰まらせながらも、記事の内容には関与しておらず、あくまでサイト運営の環境整備だけを手伝ったと主張した。話の内容が真実なのかどうかは正直、計りかねた。具体的に何をしたのか詳しく聞こうとしたが、X氏は曖昧な答えではぐらかす。

――では記事の内容は、何か政治的な信条があってのことなのですか。例えばトランプ氏の政治姿勢を支持していたという理由があるのでしょうか。それとも広告収入が目的なのでしょうか。

「それは広告収入やろ。そりゃあ、そうやろ」

X氏は、少し笑いながら悪びれることなく即答した。その上で、広告収入はX氏が管理する日本の口座に入り、フィリピンにいる仲間と分けていると話した。

具体的な金額などを質問したが、X氏は「そろそろ行かなあかん時間やから」と答えを避け、取材を打ち切るように一人で白のワンボックスに乗り込み、そのまま走り去った。

X氏が記事の中身に関与していないというのは、にわかには信じがたい言い分だった。だが少なくとも広告収入を狙ったビジネスだということは間違いなさそうだった。

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