分断の時代に果たすべき大学の役割――アジア開発銀行(ADB)総裁が語る大学改革
神田眞人(アジア開発銀行(ADB)総裁)
大学は独自財源を確保せよ
――その役割を果たすために、大学はまず何に取り組むべきでしょうか。
現在、世界中で国家による大学への干渉が起きています。大学自身が主体的に学問を展開できなければ、自由な市民の育成は望めません。学問・言論の自由を守る第一歩が、政府から独立した財源の確保です。
日本の国立大学の経営は、国からの運営費交付金で財源の約30%を賄っています。少ないといわれますが、イギリスの国立大であるオックスフォード大学の8%や、アメリカの州立大学のカリフォルニア大学バークレー校の12%に比べればかなり高い。日本の私大の私学助成金への依存度は10%程度ですが、国家への経済的依存度の低いアメリカの大学でさえ、独立性の危機に見舞われています。日本の大学は、多様で強靭な資金構造を早急に構築し、持続的な自立性を備えるべきです。
国立大は昨今、独自財源を強化しようと努力を重ねていますが、一方で私大は国費依存を高めており、両者の境界線が曖昧になっています。国費が増えるほど政府の影響力が強まり、独自財源が増えれば自立性が高まります。
卓越した研究水準を実現し、資金や人材の新しい流れを作り、リベラルアーツ教育を充実させて、社会構造の変化に対応できる人材を育成する。大学には現在、重要で困難な役割が課されているのです。
(続きは『中央公論』2025年12月号で)
構成:髙松夕佳
神田眞人(アジア開発銀行(ADB)総裁)
〔かんだまさと〕
1965年兵庫県生まれ。東京大学法学部卒業。オックスフォード大学院経済学修士。87年旧大蔵省入省、主計官、主計局次長、総括審議官などを歴任し、2021〜24年財務官を務めた。内閣官房参与を経て、25年2月より現職。世界銀行に6年勤務、OECDコーポレートガバナンス委員会議長に8年間在任。
1965年兵庫県生まれ。東京大学法学部卒業。オックスフォード大学院経済学修士。87年旧大蔵省入省、主計官、主計局次長、総括審議官などを歴任し、2021〜24年財務官を務めた。内閣官房参与を経て、25年2月より現職。世界銀行に6年勤務、OECDコーポレートガバナンス委員会議長に8年間在任。
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