人口急増で街間格差が広がる中央区、開かれた街と閉ざされた街が混在する港区の「輝く街・くすむ街」

牧野知弘の23区「街間格差」第2回
牧野知弘
高輪ゲートウェイ駅周辺。山手線の新駅開業は約半世紀ぶりになる(写真提供:PhotoAC)
「家を買うなら五輪後」とまことしやかに語られた東京23区。フタを開けてみれば、資材の値上がりや「おうち時間」の高まりなどに伴い、むしろ首都圏では高騰したマンション・戸建ても多くみられ「期待通りにいかなかった」という読者も多いのでは。しかし不動産事情に詳しく、多くのベストセラーを持つ牧野知弘さんはコロナ前に刊行した著書『街間格差』で今の変化を鋭く予言していました。その牧野さんが23区、それぞれの区でこれから輝く街、くすむ街をピックアップ! 今回は「中央区」「港区」です。

「中央区」の輝く街・くすむ街

中央区は昭和30年代頃には人口が15万人程度ありましたが、地価が高騰するにつれて人々は郊外へと移住し、人口は急激に減少していきました。そして1997年(平成9年)には人口は72000人と往時の半分程度の水準にまで減少しました。

 ところが、この年をボトムに劇的に改善した中央区の人口は、2022年現在で172000人を超えるに至っています。なんと四半世紀(25年)で10万人もの激増です。

 この人口増加を牽引したのが、月島、勝どき、晴海といった湾岸部の「街」です。これらの中でも築地や銀座などの繁華街に近い月島や勝どきは今後も生き残っていくと思われます。

 この二つの「街」は江戸からの文化を今に引継ぎ、観光地としての側面を備えつつも、交通の便は有楽町線と都営大江戸線を備えており、隅田川一つ越えるだけで都心部にアクセスできる、という高い利便性を備えているからです。

 一方で晴海にはバス路線があるだけで鉄道路線がありません。

 東京五輪の開催後、選手会場跡地には4145戸のマンションが分譲中で、これまでの販売では好調に推移していると言われています。

23968746_s.jpg晴海の選手村跡地。現在、マンションとして分譲されている(写真提供:PhotoAC

販売好調の理由は交通アクセスというよりも、分譲価格が周辺相場より2,3割も安いことから投資目的のマネーが相当数入っているようです。

 都ではBRT(Bus Rapid Transportation)を設け、バス通勤を推奨しているようですが、専用レーンを設けることはしないため、毎日毎朝の通勤がスムーズに行くとは思えません。

 

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