人口急増で街間格差が広がる中央区、開かれた街と閉ざされた街が混在する港区の「輝く街・くすむ街」
牧野知弘の23区「街間格差」第2回
牧野知弘
流れが分断された西新橋、陸の孤島芝浦
一方で都心にあっても、発展からやや取り残されつつあるのが西新橋、芝浦です。私は以前新橋に事務所を構えていましたが、2014年3月新橋・虎ノ門間に環状二号線(マッカーサー道路)が開通した後、街に如実な変化が生じたことを実感しました。
駅までの距離としては変わりないものの、幅員が広くなった道路を渡るには信号のある場所まで移動しなければならなくなったことで、道路の南側部分にあり駅から遠くなった新橋五丁目、六丁目、西新橋三丁目から愛宕にかけては人の流れが分断され、同時に賑わいがなくなってしまいました。
実際、愛宕近辺の飲食店では撤退が相次ぎ、オフィスには空室が増えました。ビルも昭和に建てられた古いものが多く残っており、結果としてどこか寂しげな「街」となっています。
芝浦はバブルの頃に芝浦四丁目、通称「田の字地区」とも呼ばれる埋立地に多くのオフィスビルが建設されました。その後、近辺に位置する芝浦アイランド地区にはタワーマンションがいくつか建っています。
しかし地理的に捉えれば運河の中にポツンと孤立したエリア、という印象が否めません。場所によっては夜暗く、交通の要の田町駅まで徒歩10分以上かかるなど、まるで絶海の孤島です。
東京モノレールの高架橋が縦走する芝浦運河(写真提供:PhotoAC)
大都会・東京のイメージからは忘れがちですが、海に面している以上塩害も大きい環境です。
オフィス中心の開発が行われた地域ですが、オフィス街としての評価は高くなく、住居としての交通利便性も必ずしも良好とは言えません。今後の発展可能性は少ない街のように感じられます。
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牧野知弘
1959年生まれ。オラガ総研株式会社代表取締役。東京大学経済学部卒業。第一勧業銀行(現:みずほ銀行)、ボストンコンサルティンググループを経て、89年三井不動産入社。数多くの不動産買収、開発、証券化業務を手がけたのち、三井不動産ホテルマネジメントに出向し、ホテルリノベーション、経営企画、収益分析、コスト削減、新規開発業務に従事する。2006年日本コマーシャル投資法人執行役員に就任しJ-REIT(不動産投資信託)市場に上場。09年株式会社オフィス・牧野設立およびオラガHSC株式会社を設立、代表取締役に就任。15年オラガ総研株式会社設立、以降現職。著書に『街間格差』『なぜ、街の不動産屋はつぶれないのか』『空き家問題』『こんな街に「家」を買ってはいけない』『2040年全ビジネスモデル消滅』など。テレビ、新聞などメディア出演多数。