完成した街並みに続出する相続問題を前に「脱・高級住宅地」が求められる世田谷区。人気の東横線沿線でも活況が失われつつある街がちらほらな目黒区の「輝く街・くすむ街」
牧野知弘の23区「街間格差」第5回
牧野知弘
アクセスが飛躍的に向上した目黒駅周辺
また、実は区内にない駅ですが、JR目黒駅周辺も注目に値するエリアです。
駅の南西に目黒雅叙園、北西には庭園美術館の緑が眩しく、坂を下った山手通りの先には下目黒の住宅地が広がります。目黒駅は東急目黒線が東京メトロ南北線と都営三田線に接続したことで、都心へのアクセスが飛躍的に向上しました。
駅までの坂がかなりきついのが難点ですが、このあたりも住むにはおすすめです。
目黒駅から大鳥神社まで続く権之助坂商店街(写真提供:Photo AC)
東急東横線に乗って車窓を眺めれば、祐天寺あたりから学芸大学、都立大学、自由が丘まで戸建てやマンションが立ち並びます。
特に学芸大学駅周辺の鷹番や目黒通り近くの碑文谷は昔からの住宅地で、駅前には充実した商店街があるので住み心地は良いでしょう。
かつての活況が失われつつある自由が丘・代官山
ただこれまで高い人気を誇ってきた東横線沿線もほとんどがすでに完成した「街」となっていて、家並みには古さが目立ち始めています。ここもこれからの大量相続時代を経て、物件が大量に出回るエリアとなりそうです。
日本有数の高級住宅地とされた柿の木坂も今後、大量の相続の発生が予見されるエリアです。これから先、何かの手を打たないかぎり、このあたりの不動産価値の維持は難しくなると思われます。
加えて最近ぱっとしなくなってしまったのが自由が丘や代官山です。
代官山駅前(写真提供:Photo AC)
かつてのショッピングタウンもネットショッピングに押されているのでしょうか、歩いているとシャッターを閉ざしたままの商店がちらほら見られるなど、かつての活況が「街」から失われつつあるように感じられます。
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牧野知弘
1959年生まれ。オラガ総研株式会社代表取締役。東京大学経済学部卒業。第一勧業銀行(現:みずほ銀行)、ボストンコンサルティンググループを経て、89年三井不動産入社。数多くの不動産買収、開発、証券化業務を手がけたのち、三井不動産ホテルマネジメントに出向し、ホテルリノベーション、経営企画、収益分析、コスト削減、新規開発業務に従事する。2006年日本コマーシャル投資法人執行役員に就任しJ-REIT(不動産投資信託)市場に上場。09年株式会社オフィス・牧野設立およびオラガHSC株式会社を設立、代表取締役に就任。15年オラガ総研株式会社設立、以降現職。著書に『街間格差』『なぜ、街の不動産屋はつぶれないのか』『空き家問題』『こんな街に「家」を買ってはいけない』『2040年全ビジネスモデル消滅』など。テレビ、新聞などメディア出演多数。