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民主主義は権威主義に劣るのか? コロナ下の政治体制を分析する 安中進

安中進(早稲田大学高等研究所講師)

権威主義の優位は認められない

 コロナ禍にあって、民主主義国家は大規模なパンデミックに対して脆弱なのではないか、という言説が散見される。しかし、先述した通り、データの透明性の影響などを考慮すると、民主主義と比した権威主義国家のコロナウイルス対応における優位は認められない。本稿は、近年の世界的な民主政治の混乱と相まって、民主主義的価値に疑問が投げかけられる中で、コロナウイルスの死者数の問題において、実証的な根拠を示して反論を行った。

 民主主義や自由は、人間社会が長い政治的闘争をへて確立してきた理念であり、不用意に貶めることがあってはならない。本稿が示唆しているのは、少なくともデータの透明性の影響をはじめとする諸要因を適切にコントロールすることなく、政治体制の優劣を断定的に判断することはできない、ということなのである。


[註]

(※1)従属変数を対数化せずに、ポワソンモデルで分析しても結果は大きく変わらない。詳しくはAnnaka(2021)を参照。


[参考文献]

Annaka, S. (2021) Political Regime, Data Transparency, and COVID-19 Deaths Cases, SSM - Population Health, 15, 100832.

Annaka, S., and Higashijima, M. (forthcoming) Political Liberalization and Human Development: Dynamic Effects of Political Regime Change on Infant Mortality across Three Centuries (1800-2015), World Development.

Cassan, G., Steenvoort, M.V. (2021) Political Regime and COVID 19 Death Rate: Efficient, Biasing or Simply Different Autocracies?, Available online: arXiv:2101.09960.

Hollyer, J. R., Rosendorff, B. P., and Vreeland, J. R. (2014) Measuring Transparency, Political Analysis, 22, 413-434.

Badman, R.P., Wu, Y., Inukai, K., Akaishi, R. (2021). Blessing or Curse of Democracy?: Current Evidence from the Covid-19 Pandemic,arXiv:2105.10865.

 

安中進(早稲田大学高等研究所講師)
〔あんなかすすむ〕
1984年埼玉県生まれ。2008年早稲田大学社会科学部卒業、日本学術振興会特別研究員を経て、20年同大学大学院政治学研究科博士課程修了。専門は比較政治経済学、計量政治経済史。博士論文「貧困の政治経済学」で小野梓記念学術賞受賞。
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