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ヒット作は狙って出せるのか!? ~売れるきっかけ作りの努力と、『女人入眼』『幸村を討て』にみる歴史小説の可能性~

あの本が売れてるワケ 若手営業社員が探ってみた
中央公論新社の若手営業社員が自社のヒット本の売れてるワケを探りつつ、しれっと自社本を紹介していく本企画。第7回は、永井紗耶子『女人入眼』と今村翔吾『幸村を討て』を題材とします。

何が売れるかわからない業界で、それでも狙ってヒットを出したい

「本は何が売れるかわからない。それがこの業界の厳しさでもあり、面白さでもある」というのは、入社2年目にしてすでに多くの方から言われてきたことで、仕事をする中で実際に感じていることでもあります。今回あげた2作がヒットしているのは、『女人入眼』は第167回直木賞の候補になったから、『幸村を討て』は第166回直木賞を受賞した今村翔吾さんの受賞第一作だったからという、とてもわかりやすい理由があります。もちろん内容はどちらもめちゃくちゃ面白いのですが、どんなに面白い作品でも「何か」がなければ埋もれてしまうことが多いのがこの業界。さらに言えば「何か」があったのに埋もれてしまう作品だってある。
どれくらい埋もれるかというと、なんと本というのは1日に約200冊の新刊が出ています。え?1か月じゃなくて??毎日200冊??私も以前はそんなバカな、と思っていたんですが、先日紀伊國屋新宿本店でこんなコーナーが。

マジで出てるじゃん...。つまり書店とは、常にある本の「何か」と、そのまた別の本の「何か」が戦い合っている状態にあるということ。相当の営業努力がないと、すごい勢いで「埋もれる」ことになります。実は「ずっと店頭に置いてある本」というのは、とんでもない"偉業"を成し遂げているのですね。

さて、さきほどからしきりに「何か」と漠然とした表現を繰り返していますが、たとえば上記の直木賞などの賞のほかに、新聞書評で取り上げられる、テレビで紹介される、SNSでバズる、時事的な問題で関心が高まる、などがあるでしょうか。たとえば小社の本でいうと、去年はTiktokクリエイターのけんごさんが筒井康隆さんの『残像に口紅を』を紹介し大ブレイク。もう少しさかのぼれば中公新書『ルワンダ中央銀行総裁日記』が「なろう小説系」の帯に変えたことでSNSで話題となり何万部も重版。また最近ではロシアのウクライナ侵攻に伴って、中公新書『物語ウクライナの歴史』が売れました。この3つは、もちろん「今」売れるために狙って刊行したものではありません。『残像に口紅を』は初版が1989年(文庫は1995年)、『ルワンダ中央銀行総裁日記』は1972年(増補版は2009年)、『物語ウクライナの歴史』は2002年の刊行です。どれも内容が素晴らしく、ロングセラーだったからこそ、今改めてヒットしたのだと言えます。

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