ヒット作は狙って出せるのか!? ~売れるきっかけ作りの努力と、『女人入眼』『幸村を討て』にみる歴史小説の可能性~
あの本が売れてるワケ 若手営業社員が探ってみた
直木賞作家・今村翔吾さんのプロモーション力
『幸村を討て』の刊行は直木賞受賞と関係なく決まっていたので、我々はそれが受賞第一作になるのかどうかをただソワソワと待っていたのですが、当の受賞者・今村翔吾さんは違いました。受賞後のあらゆるインタビューで「最も好きな武将は真田信之(幸村の兄)」「はじめて読んだ小説は池波正太郎の『真田太平記』」「池波正太郎先生は37歳で直木賞を取った。僕も同じ年齢で取れて嬉しい」などなど、こんなこと言われたら絶対読みたくなる!!という発言で着々と読者の『幸村を討て』への期待感を高めてくださっているのです。ストーリー作りの名手こそなせる技か!?と感激しました。
そして現在行われている「今村翔吾のまつり旅」。受賞会見で宣言された47都道府県の書店へのお礼参りを5月に開始し、今なお自宅に帰らず全国を回っていらっしゃいます。著名な作家が全国の書店を回ると、当然お客さんもたくさんきますので、作品が多く、長く置かれる。かくして「とんでもない"偉業"」だと述べた「同じ本がずっと店頭にある」状態が続くということになります。
ヒット自体には運の要素も多くかかわるものの、やはりヒットに至るまでの準備がモノをいう。まさにChance favors the prepared mind(幸運は用意された心のみに宿る)といったところでしょうか。
みなさま、今後も営業社員として狙ったヒットを出せるよう頑張りますので、待っていてください。
次回は8月26日配信予定です。
お楽しみに!!
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幸村を討て
今村翔吾 著
昌幸、信之、幸村の真田父子と、徳川家康、後藤又兵衛、伊達政宗、毛利勝永らの思惑が交錯する大坂の陣――誰も知らない真田幸村の真の姿に最も旬な作家が迫る、ミステリアスな戦国万華鏡。