佐々江賢一郎 「反撃能力」を導入し「核戦力共有」の議論を

佐々江賢一郎(日本国際問題研究所理事長)

対露政策の見直しを

 ロシアと経済的な結びつきが強かったドイツが今回、大きく外交・安保政策を転換させたのは、米国が頼りにならないからというよりも、ロシアの脅威の中身が変わってきて、もはやきれいごとでは済まされない、プーチンのやり方には力で備える必要があるというように認識を新たにしたからだろう。

 そのロシアが極東では全く違った顔を見せると考えるのはナイーブだ。日露関係についても根本的なレビューが必要だ。北方四島問題を解決して平和条約を締結するという基本的な目標は捨てないにしても、今はそれを超えた地政学的、安全保障上の要請が出てきている。その中でロシアとどのような関係を構築していくのか。

 ロシアは北方領土で軍事演習を行うなど、日本周辺での軍事活動を活発化させている。中国も同様だ。日本でみなが中露の動きに不安を感じ、それこそ「白旗を上げろ」というような議論にさせないためには、日本には抑止力があるということを国内外にしっかりと示さなければならない。

 日本は日清戦争で割譲された遼東半島をロシア、ドイツ、フランスの三国干渉により清に返還した。その後、「臥薪嘗胆」を合言葉に力を増強する努力をしたからこそ、その後の日露戦争でロシアのバルチック艦隊との戦いにぎりぎり対応することができた。

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