佐々江賢一郎 「反撃能力」を導入し「核戦力共有」の議論を

佐々江賢一郎(日本国際問題研究所理事長)

餌食にならないために

 日本は戦争を望んでいるのではなく、戦争を阻止するために、力を蓄え、それを見せつけなければいけない。平和のための軍備、防衛強化が必要だ。日本に手を出せば火の粉を浴びると思ってもらわない限り、日本は「イージーターゲット」(餌食)になる。

 これには全国民的な理解が必要となる。防衛力の整備は今、決定してもその先5年、10年はかかる。中国や北朝鮮が先行している間、我々は惰性で防衛力の強化に制約をかけてきた。今、動かなければ、ギャップはさらに広がっていく。

 北朝鮮の核・ミサイルをめぐる交渉は過去十数年続けられてきたが、ことごとく失敗した。交渉がうまくいかない場合にどうするかを考えなければ、それは思考停止でしかない。交渉の努力は続けつつ、北朝鮮に対する抵抗力、抑止力を増やさなければならない。

 日本は攻撃されても守りに徹し、決してこちらにはやって来ないイージーターゲットだとみなされないようにするためには、敵地に届くミサイルも必要になってくる。

 自民党は今年4月、日本への武力攻撃が起きた際に自衛目的で敵のミサイル発射基地などを破壊する「反撃能力」を自衛隊が保有するよう政府に提言した。議論を進め、早期に導入するべきだ。

 防衛費について、自民党は国内総生産(GDP)比2%以上というNATOの目標に触れ、「5年以内に防衛力を抜本的に強化するために必要な予算水準の達成を目指す」とした。それには賛成だが、それで十分な抑止力を持つことができるのか。政府が具体的な水準と中身を示すことが必要だ。(談)


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佐々江賢一郎(日本国際問題研究所理事長)
〔ささえけんいちろう〕
1951年岡山県生まれ。東京大学法学部卒業後、外務省入省。北米第二課長、北東アジア課長、内閣総理大臣秘書官、総合外交政策局審議官、経済局長、アジア大洋州局長、外務審議官、外務事務次官、駐米大使などを歴任。北朝鮮の核問題をめぐる「六者協議」の日本代表、G8サミットの政務局長を務めるなど、外交官として豊富で幅広い経験を持つ。2018年6月より現職。
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