佐々江賢一郎 「反撃能力」を導入し「核戦力共有」の議論を

佐々江賢一郎(日本国際問題研究所理事長)

中国、北朝鮮が見ている

 中国は、ウクライナ戦争を注意深く見ている。そこからどんなレッスンを学んだかを結論づけるのはまだ早いが、少なくとも「弱いものは蹂躙される」という考えを一層強め、軍事力の重要性を再認識しているのは間違いない。北朝鮮も同様に、「ウクライナは核を持っていないからああいうことになった」と思っているかもしれない。

 日本の国民も今回、違う角度からレッスンを学ぶ必要がある。

 第二次大戦後の世界秩序は米国の力によって成り立ってきた。その米国の力が相対的に劣化している。劣化しているからといって頼りにならないということではなく、劣化しているが故に米国をサポートし、国際社会で引き続き重要な役割を果たしてもらわないと世界全体が危機に陥る。そのために日本はできることはすべてやらなければならない。このシステムを支えることが日本の利益だと考えれば、他人事ではないはずだ。

 今のシステムとは相いれない勢力が力をつけている現状にどう対応するか。抗議や説教といったきれいごとでは済まされない。残念ながら、力には力を備えて対応しなければならないという現実を日本は学ぶ必要がある。

 日本では往々にして「力対力」はよくないことだと受け止められがちだ。しかし、相手が善意の話し合いに応じてくれない場合への備えを常に持っておこうと考えるのは当然のことではないか。長年、日本はそこの部分を米国に依存してきたが、今や米国も全部は背負えなくなってきた。

1  2  3  4  5  6  7