今こそ伝えたい『ルワンダ中央銀行総裁日記』ヒットの本当の立役者 ~「やってみるか!」の連鎖が大きなうねりに~

あの本が売れてるワケ 若手営業社員が探ってみた

熟練の「勘」が可能にしたリスクテイク

リスクの高い仕入れを可能にしたのは何か。それはやはり、書店員さん熟練の「勘」というほかありません。この「勘」はもちろん非科学的なものではなく、過去に売れた本の著者、テーマ、装丁や来店するお客さんの情報など、書店に日々身を置いているからこそ得られる膨大な情報が基礎になっています。私自身も出版社の営業として書店員さんと話す機会が多いですが、自らが勤める店舗の特色を深く理解されている上、商品の知識もとてつもなく豊富で、本当に驚かされます。

『ルワンダ』のヒットは、この書店員の熟練の勘にもとづく「やってみるか!」という判断が生み出したものだと思います。最初期に門前払いされていたら、そこでそれ以上広げるのは諦め、その後、SNSで話題になったり、テレビで取り上げられたりするようなことは起こりえなかったでしょう。数店舗から始まって次は十数店舗...と増えていった協力店がリスクを分散しながらヒットの芽を育ててくれました。ネット書店が存在感を増す今だからこそ、実店舗で働く方々の力でこのようなヒット作が生まれたことを多くの人に知っていただきたいです。

皆さんのお近くの書店でも、書店員さんが独自の目利きで他にはない売り場づくりをしているはずです。もしかしたらお近くの書店にだけネクストヒットとなるような掘り出し商品が置かれているかもしれません。ぜひ本だけでなく店全体を眺めるという視点で本屋に訪れてみてください。きっと面白い発見、本との出会いがあるはずです。

ルワンダ中央銀行総裁日記

服部 正也 著

一九六五年、経済的に繁栄する日本からアフリカ中央の一小国ルワンダの中央銀行総裁として着任した著者を待つものは、財政と国際収支の恒常的赤字であった―。本書は物理的条件の不利に屈せず、様々の驚きや発見の連続のなかで、あくまで民情に即した経済改革を遂行した日本人総裁の記録である。今回、九四年のルワンダ動乱をめぐる一文を増補し、著者の業績をその後のアフリカ経済の推移のなかに位置づける。

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