2010年11月号【編集後記】
★魯迅に「『フェアプレイ』にはまだ早い」というエッセイがあります。「水に落ちた犬に三種類あり。いずれも打つべきものなり」という物騒な内容です。革命派と軍閥の確執の中、政敵に対し欧米流のフェアプレイは無...
★魯迅に「『フェアプレイ』にはまだ早い」というエッセイがあります。「水に落ちた犬に三種類あり。いずれも打つべきものなり」という物騒な内容です。革命派と軍閥の確執の中、政敵に対し欧米流のフェアプレイは無...
★「義を為すは毀を避け誉に就くに非ず」(墨子)。最近、なぜか「正義」が大ブームです。某国の超エリート大学で行われている正義を考える講義の風景をテレビ放送したところ、それを見た我が国民までが白熱したとの...
★哨戒艦撃沈に対し日本海で米韓軍事演習。毎度の事ながら北朝鮮の乱暴行為のお陰で東アジアはまた緊張です。聞くところによると、権力の世襲を強行するための環境作りという意図が、一連の瀬戸際戦術の裏にはあると...
★文久三年(一八六三年)八月十八日の政変、蛤御門の変、四ヵ国艦隊下関攻撃に敗れ、幕府の第一次長州征討に屈した長州藩は、高杉晋作のクーデターの後、一気に軍制を改革。攘夷派のくせに西洋式を導入し、ミニエー...
★仕事上の研究のため、というのは嘘で、単に流行ものに弱いため、早速、iPadを手に入れて試してみました。うーん、インターネットやスマートフォンを最初に使った時ほどのインパンクは感じませんねぇ。これで革...
★だいぶ前になりますが、沖縄で地元の方に、一九七〇年のコザ暴動の話を聞いたことがあります。当時、米兵の犯罪が頻発。しかし、米軍による軍法裁判で軽微な罪にしか問われず、住民の不満がたまっていました。そこ...
★「君たちは働く者の額にこのイバラの冠をかぶせることはできない。君たちは人類を金の十字架にかけることはできない」。一八九六年、アメリカ大統領選の民主党大会で、候補となったウィリアム・ジェニングズ・ブラ...
★先日、会社から帰宅の途中、外堀通りから東京駅の方角を眺めたとき、そのスカイラインのあまりの変貌に改めて呆然となりました。大阪生まれの私が初めて東京に降り立ったのが三十数年前の東京駅。 その時、丸の内...
★初代司法卿となった江藤新平は、急進的な近代化論者でしかも西欧型司法制度の原理主義的な推進者でした。ために自らも発足したばかりの明治政権の中にありながら、薩長出身の権力者の汚職・不正事件を執拗に摘発し...
★ミュージカル『エビータ』で有名なエバ・ペロンの夫、フアン・ペロンは一九四六年、アルゼンチンの国力の歴史的な頂点で大統領に上り詰めました。第二次世界大戦で局外中立を保ち、両陣営に食料、特に牛肉を売りま...
★「明治元年の五月、上野に大戦争が始まって、その前後は江戸市中の芝居も寄席も見世物も料理茶屋も皆休んでしまって、八百八町は真の闇、何が何やらわからないほどの混乱なれども、私はその戦争の日も塾の課業を罷...
陸奥宗光は、東学党の乱から日清戦争、三国干渉に至る外交の内幕を回想録に残しています。「......滔々たる世上の徒と共にその是非得失を弁論争議するは素より余が志に非ず。しかれども政府がかかる非常の時に...
★一九二九年、浜口雄幸内閣の大蔵大臣に就任した井上準之助は、懸案であった金本位制への復帰を断行します。これは旧平価解禁と呼ばれる円高政策で、竹森俊平氏によると、大正バブルの清算という通説とは異なり、国...
★バブル崩壊後の経済危機の中、決定的な政策を延々と行えないでいた自民党政権を、経済学者のポール・クルーグマンは「自由民主党は、自由主義でもなければ民主的でもない。まして政党ですらない」と皮肉りました。...
★「孟子謂高子曰、山徑之蹊間、介然用之而成路、爲不用、則茅塞之矣」。バラク・オバマが米中戦略経済対話のスピーチで引用した孟子の一節。アメリカ大統領に自国の古典を使ってご機嫌取りをされて協調を求められ...
★私が生まれ育った淀川の上流域、大阪・京都府境近辺は、徳川幕府瓦解の舞台でした。野口武彦さんの著作に詳しいですが、鳥羽・伏見の軍事衝突で後退した途端、まだ戦線を維持していたにかかわらず譜代の淀藩が城門...
★ちょうど一五〇年前の一八五九年七月一日、旧暦の安政六年六月二日、日本は二世紀以上続いた鎖国を終え、横浜港を開港しました。現在にまで続く近代化の第一歩、と地元ではにぎやかにイベントを行っていますが、一...
★「いわば霊魂のアウシュビッツともいうべき遺跡で、いまだ死んではいない人々の大量虐殺の墳墓と名づけてよいのかもしれない」(訳・伊藤哲)。四月十九日、七十八歳で逝去した英国の作家、J・G・バラードが一九...
★一五、六年前のこと。今回、不正献金事件で逮捕された西松建設の元社長、国沢幹雄氏にかなり頻繁に取材したことがあります。当時、彼は財務担当常務。ゼネコン汚職騒動の中、内部関係者としてはかなりフランクに業...
★「交通至便の世の中に文明の事物を聞見せざるに非ざれども、耳目の聞見は以て心を動かすに足らずして、その古風旧慣に恋々するの情は百千年の古に異ならず、......一より十に至るまで外見の虚飾のみを事とし...
★まだ、日本中が敗戦の衝撃の中にあった一九四五年八月末、石橋湛山は自身が社長を務める『東洋経済新報』に「更生日本の針路―前途は実に洋々たり」という論説を発表します。そのときの日本の状態は史上最悪の破滅...